次に映る色はどんな色で(4th/Apr./2012)

実際に選択したこと

嵐の後の青空に1人で昨日の残りをこなした。
何度も何度も交差点で信号待ちをしたけれど
イヤホンを使っていたので周りの音なんて一切聞こえなかった。

コートを身につけずに外に出るのはいつぶりだろうか?
一応念のため大きめのマフラーだけは首に巻いているが
それもいつになったら外してしまうのだろうか?なんて考えながら
僕らは駅へと急いでいた。
歩きながら周りを見渡してもやはり厚手のコートを着ている人はいなくて
軽やかなスプリングコートが人々の歩みに連動してステップを踏んでいるみたいだ。
4月の踊り。

そんなときふと耳に入ってきた言葉に僕ははっとした。
「ねぇママ、この先になにがあるの?」
「んとねー かなちゃんが見たことないもの」
「えー!!なんだろー?」
「見たらきっと大好きになっちゃうかも」


いつも見る色を追ってばかりの毎日に飽きていた僕にとって
新しいものから受ける驚きやインスピレーションを忘れていたような気がした。
どんなモノが身近にあって、どんなモノから遠ざかっていて
どんな事をやってきたのかぼんやりと考えてしまった。


不意に鳥の鳴く声が聞こえ
次の瞬間隣にいた同僚が強い口調で「いくぞぉ」と言いながら僕の肩を叩く。
信号が変わったのに歩き出さなかった僕を心配しての一撃は
まどろみの中から現実に戻るのには十分な重さと衝撃だった。


僕らは左に
彼女らは右に
それぞれ違う道を歩いて行く。

彼女らの前には明るい夕焼け前の青空が
僕らの前にはまだ薄いが夕焼けのオレンジが見える。

これからかなちゃんは何を見るのだろうか?
お母さんが言うように、好きになるのだろうか?
そしてどんな笑顔をふりまくのだろうか?
そんなことを考えながら
僕はビルの谷間に降りていった。。