空を見上げて雨粒を待った (1st/june/2011)
実際に選択したコト
気になっていた折りたたみ傘の色違いを買った。
雨粒は落ちてこない。
6月の始まりは雲のない梅雨らしからぬ空で幕を開けた。
いつ降るかわからない雨に備えてステッキと化した傘もなく、純粋な二足歩行としての足音しか聞こえない日。
ルーチンワークも終わりが近づき、太陽も西へ向かっている頃に
少し早いがキリのいい所なので仕事を終えるという事を仲間に声をかけ、オフィスを出た。
駅への道はいつもと変わらないが、僕はゆっくり歩く。
いつもなら通り過ぎてしまう雑貨店の入り口に欲しかった折りたたみ傘を見つけた。
黒に赤い波紋のようなデザインの傘。
僕は迷いもなく、誰かに先を越されないよう少し早歩きになりながら、手に取りレジに向かう。
ピッピッピ・・・ガチャン!
「6090円です」
折りたたみ傘にしては高価な部類でかなりの冒険だろうが、僕はこの子が雨粒と出会った時にどんな声なんだろうか?とお釣りをもらう間考えていた。
店を出て、僕は月のいる方向を見上げたが雲一つない薄暮だった。
雨粒はまだ落ちてこない。。