指輪が語る時間(4th/Nov./2009)

出来れば一ヶ月に一回はこのカテゴリーを書きたい。

実際に選択したコト、気づいたこと
少し前まで左の小指にリングをしていたのに今は躊躇無く右の小指に身につけている。
指輪はほんの少しだけ緩くて
音もなく滑り落ちてしまわないか
今日は特に気になっていた。

秋の夕暮れ。
東の空に一番星が見え始める頃、僕は得意先からの打ち合わせが早く終わり会社に戻ろうとしていた。
遠くの方でもう滅多に聞くことのない豆腐屋のラッパの音が中空に漂い
風に吹かれて僕の耳に伝わる。
日が暮れるのは何時くらいになったのかな?
なんて確かめるために視線を落とすが
左手首の鈍色に光る時計にたどり着く前に
小指の指輪が月のようにぼんやりと光って見えた。
「前外したのっていつだっけ?」と考えてしまい
外そうとしてみてもわずかに回転するだけで外れない
力を入れて回転させながら動かしたら
指輪の下から日の焼けていない、白い跡が見えた。



指輪を外しても、指輪がある。



時間の流れが皮膚にこびりついていたみたいで
カレンダーを見るより、昔の写真を見るよりも
身につけていた間の過去の出来事の記憶のようなモノが
僕が忘れているてあろう軌跡が
指輪の下でじっと息を潜めていた。


・・・
外すことを止め、僕は戻るために
左手を大きく薄暮の空に伸ばした。。